LLLの概要

Life Long Learning programme in Clinical Nutrition and Metabolism

CONTENTS
LLLとは LLLの受講開始方法
オンラインコース(on-line course) ライブコース(live-course)
クレジット(credit) ESPEN LLL Final Examination(最終試験)
JSPENとLLL 「静脈経腸栄養」LLL特集号へのリンク

LLLとは

臨床栄養において多くの研究成果や人材を有する一方で、栄養教育を非常に重要視してきたヨーロッパ臨床栄養・代謝学会(European Society for Clinical Nutrition and Metabolism、以下ESPEN)は、2005年から医療者を対象とした画期的な栄養教育プログラムである“Life Long Learning(LLL) programme”を開始しました。LLLは、Web上でのeラーニングで、アクセスが容易な“on-line course”(オンラインコース)と、より包括的な学習が可能な対面講習の“live-course”(ライブコース)が用意されています。各領域のトップリーダーによって、臨床栄養に関る高度な知識を、可能な限りエビデンスに基づき、ESPENでのコンセンサスを盛り込んだ教育内容が提供され、また、数年毎に見直しが行われる等、上質な栄養サポートを目指す臨床栄養従事者にとって非常に魅力的な内容となっています。 現在では、世界中の臨床栄養代謝学会の会員や、栄養サポート従事者が受講し、日本においてもESPENとJSPENでの交流事業の一環として、JSPEN主催のライブコースが開催されています。

ESPENのWebサイト上にあるLLLオンラインコースは、ESPENの会員資格は必要無く、E-mailアドレスがあれば、アカウントを作成後、どなたでも無料で受講が可能です。総論から各論まで、臨床栄養に関する多くのト ピックが用意れており、まず興味のあるトピックからご覧になっては如何でしょう。テキストやテスト等の教 材は基本的に英語で用意されていますが、辞書を片手に学習する価値がある、すばらしい内容となっています。

LLLの受講開始方法

LLLの受講にはアカウントの作成(個人の登録)が必要です。特別な資格は不要で、登録・受講とも無料(オンラインコース)です。ESPENのホームページ:http://www.espen.orgの画面(図1)からLLLのところの“join LLL for Free”からアカウント作成ページが開きます(図2)。登録に必要な項目はユーザー名とパスワード、メールアドレスと氏名、住所(国と都市のみ)です。登録情報はメールアドレスを基本にしていますので、後日の変更は困難です。変更する可能性が少ない個人のメールアドレスでの登録が推奨されています。lll_jukouhouhou

オンラインコース(on-line course)

LLLは38の“topic”で構成されています(図1)。各topicは2~6個の“module”に分けられ、随時追加・修正が行われています。英語以外の複数言語でも記述され、受講者への配慮がされています。各moduleには “case”(症例検討)と“self-test”(自己診断テスト)があり、繰り返し演習することで習熟度が向上します。 topic内の全moduleのself-testで合格点が得られれば topic毎の“grading quiz”(topicの卒業試験)を受けます。ただしself-testは何回でも受けられますが、 grading quizは2回しか受けられません。2回目も不合格の場合、そのtopicについては二度と合格できなくなりますので注意が必要です。オンラインコースの受講者は世界中で25000人以上に達しています。

ライブコース(live-course)

オンラインコースの各topicに対応したライブコース(受講は有料)が、ESPENの年次総会時や、各国の臨床栄養代謝学会主催で開催されています。前述のようにライブコースの目的はオンラインコースの内容の特に重要なポイントの確実な習得であり、講習内容は基本的にオンラインコースに沿ったものです。受講者は1コースあたり50名以内と少人数で、1コース4時間の講習時間内に、3~5moduleについての講義(図3)、症例検討 (図4)、意見交換が行われます。テストに合格すると“diploma”(合格証)が、不合格の場合は受講証明書がそれぞれ発行されます。ライブコースには受講回数の制限はありませんので、合格するまで何回でも受講可能です。ESPEN2014では18コースが開催され、それまでののべ参加者は約20000名になっています。

クレジット(credit)

LLLの受講を一つの資格として担保するためのクレジット制度が設けられています。オンラインコースでは一つのmoduleを履修してself-testに合格すると1クレジット、各topicの grading quizに合格すると4クレジットが取得でき、ライブコースでは、テストに合格し、certificate(合格証)を取得すると、1コース毎に4クレジットが与えられます。(以前は3クレジットだったため、データ上過去のものは3クレジットのままになっているものがありますが、実際には過去にさかのぼって4クレジットでカウントされます)クレジットの合計が100に到達すると“ESPEN LLL Final Examination”(最終試験)が受講でき、これに合格すれば“ESPEN European Diploma in Clinical Nutrition and Metabolism”が取得できます。

ESPEN LLL Final Examination(最終試験)

ESPEN LLL Final Examination(最終試験)は、毎年9月に開催されるESPENの年次総会時に施行されています。100問の試験が受験者の学習範囲に応じて用意され、3時間の試験時間で行われ、正解率が80%で合格となり、ESPEN diplomaが授与されます。世界で百余名のESPEN LLL Final Examination 合格者がおり、日本では2019年9月時点で30名の方がdiplomaを取得されています。

ESPENのFacebookページより

JSPENとLLL

日本臨床栄養代謝学会は積極的に教育事業を展開し、栄養療法の基礎教育を充実をさせてきました。そして、国際的な栄養教育の中・上級コースであるLLLの日本への導入を、ESPENの全面的な協力の下ですすめ、2009年からLLLライブコースを開催しており、2013年までに8回、計54コースを開催しました。受講者数はのべ584名、合格者数はのべ413名、合格率は71%で、ESPEN主催のライブコースを上回る合格率を得ています。講習はESPEN主催のものと同一内容で、日本人講師が日本語で講義することにより言語と地域・文化・人種によるギャップを解消し、受講しやすくなっています。また、テストに合格すればESPEN主催のLLLと同様のクレジットが取得でき、ESPEN LLL Final Examination受験に向け、クレジットを貯めることができます。渡欧する必要がなく、国内で比較的容易かつ安価に講習が受けられ、また、少人数制で、講師や受講者間で活発な議論・意見交換が行われるなど、多くのメリットがあります。医師にとって、ライブコースの受講は、日本臨床栄養代謝学会認定医・指導医の認定・更新の資格条件に設定されております。

LLLは全ての医療従事者に開かれています。スキルアップのため、そして、全ての患者さんのために、LLLに登録し、JSPEN-LLLライブコースの利用をお願い致します。

「静脈経腸栄養」LLL特集号へのリンク

特集:ESPEN-LLLに学ぶ(前編)

特集:ESPEN-LLLに学ぶ(後編)

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