理事長 挨拶

一般社団法人 日本臨床栄養代謝学会 理事長
北里大学医学部上部消化管外科学 主任教授

比企 直樹

 

 この度、日本臨床栄養代謝学会(JSPEN)の理事長を拝命いたしました比企直樹です。大役を仰せつかり身の引き締まる思いですが、使命を全うすべく、全力を尽くす所存でございます。

 私は1991年に初めて小越章平先生主催の第6回静脈・経腸栄養研究会に参加して、臨床栄養学をdiscussionで語り尽くす素晴らしさを強く感じました。この研修医の頃、まさかこの歴史と伝統ある本学会の運営に携わるとは思ってもおりませんでした。

 昨年より、COVID-19によるパンデミックという大きな社会問題に加えて、本学会にも大きな津波がやって参りました。前理事長のご体調による退任です。この波に本学会が大きく揺れた時、「福沢諭吉ここに在り」の歌詞を思い出しました。上野の山では官軍による戦いが始まった時も騒ぐ人々に溢れる大江戸で福沢諭吉ただひとりが上野から8キロ離れた芝新銭座でいつも通り授業していたことを表した歌詞です。このような時だからこそ、心を落ち着けて、本来、私が30年前に静脈・経腸栄養研究会で感じた学問をすることの尊さを実感できるような学会にしたいと強く思いました。

 私は、がん専門病院である「がん研有明病院」に消化器外科医として15年勤務し、日本一のがん手術症例の診療に携わってまいりました。ここで学んだことは、我々が解決しなければならない問題は病室に行って初めてわかる、つまりClinical questionは常にベッドサイドにあるということでした。多くの優秀な臨床家を会員に持つ日本臨床栄養代謝学会(JSPEN)は、このClinical questionを解決する術を持ち備えています。この術を一世代で終わらせることは勿体なく、この力を以って若き臨床家を育ててゆく、「教育システムの確立」こそが、今、本学会に求められていると考えます。

 理事として2013年11月の法人化に携わり、その後、監事として一歩引いたところから学会の活動を拝見して感じたことを活かし、落ち着いて学問が出来、それを教育に落とし込むことが出来るように改革してゆきたいと思っております。やることは山ほどあります。理事長に就任したばかりで初心者マークが取れないと言ってはいられません。2万人以上の学会員に学びの場としての本学会を提供できるように、理事・監事、代議員そして会員の皆様とともにアクセル全開で取り組んで参りたいと思います。どうか、ご支援、ご指導のほど何卒よろしくお願い申し上げます。