JSPEN栄養士・管理栄養士部会の皆様へ

 近年、患者の高齢化や生活習慣病の有病者の増加に伴い、患者の栄養状態を改善・維持し、免疫力低下の防止や治療効果及び生活の質(Quality of life)の向上などを推進する観点から、傷病者に対する栄養管理・栄養指導や栄養状態の評価・判定等、管理栄養士が栄養の専門家として、医療現場において果たす役割は大きなものとなっています。
2020年の診療報酬改定では集中治療室における早期栄養介入管理加算が診療報酬として認められました。さらに2022年の診療報酬改定では、周術期栄養管理実施加算及び特定機能病院においては管理栄養士の病棟配置に対する入院栄養管理体制加算が新設され、管理栄養士が主体的に「栄養管理」を行うことにより、治療効果を高める栄養療法や栄養管理の充実、医療安全の強化などの効果が期待されています。また、医師の働き方改革の一環として、タスクシフト・タスクシェアが推進されており、管理栄養士が専門性を活かして栄養全般について業務分担をすることで、医師の負担軽減と同時にチーム医療の水準を上げることも期待されています。
その他、高度急性期病院、急性期病院、回復期病院、慢性期病院の入院前から入院中、そして退院後の在宅医療においてのシームレスな栄養管理、栄養食事指導体制の実現なども求められています。そのために、栄養情報提供書の作成及び病院内のNSTだけでなく、地域一体型NSTなど、栄養士同士だけでなく多職種との連携が大切になってきます。
私たち栄養士・管理栄養士の業務が、給食管理や栄養指導を主とした業務から「栄養管理」を主とする業務へシフトするにつれ、求められるスキルはどんどん高まっていくと推察しております。部会では、管理栄養士のスキルアップを目的に、昨年、「周術期、救急・集中治療専門管理栄養士」の新設を理事会で認めて頂きました。現在、職能団体である日本栄養士会と、日本健康・栄養システム学会との共同認定を目指して協議を進めており、ゆくゆくは、「医療広告に専門職名として提示出来る資格」に結びつけることできればと考えています。
 更に今後は、管理栄養士がエビデンスやアウトカムを発信していくことも重要と考えております。栄養特に食事に関するエビデンスを出していくにはさまざまな交絡因子があり、栄養治療の効果の評価は困難です。しかしながら、日頃の成果や取り組みをまとめること、そして学会や研究会で発表することでさまざまなコメントや知見を得ることができ、それがスキルアップやさらなる研究に発展し、積み重ねていくことでエビデンスの構築に繋がっていくと思います。
 栄養士・管理栄養士部会では、毎年の学術集会のパネルディスカッションや、各種セミナーなどで会員の皆さまのお役に立てるようなテーマを企画しております。会員の皆さまのすべてのご意見を聴取して事業に反映していくことは難しいですが、是非ともご参加頂き、栄養士・管理栄養士部会をご支援頂きますようお願い申し上げます。

2023年4月1日
栄養士・管理栄養士部会 部会長 斎藤恵子
東京医科歯科大学病院