症例報告を含む医学論文及び学会研究会発表における患者プライバシー保護に関する指針

医療を実施するに際して、患者のプライバシー保護は医療者に求められる重要な責務である。一方、医学研究において症例報告は医学・医療の進歩に貢献してきており、国民の健康、福祉の向上に重要な役割を果たしている。医学論文あるいは学会・研究会において発表される症例報告では、特定の患者の疾患や治療内容に関する情報が記載されることが多い。その際、プライバシー保護に配慮し、患者が特定されないよう留意しなければならない。

以下は外科関連学会協議会において採択された、症例報告を含む医学論文・学会研究会における学術発表においての患者プライバシー保護に関する指針である。

(1)患者個人の特定可能な氏名、入院番号、イニシャルまたは「呼び名」は記載しない。

(2)患者の住所は記載しない。但し、疾患の発生場所が病態等に関与する場合は区域までに限定して記載することを可とする(神奈川県、横浜市など)。

(3)日付は、臨床経過を知る上で必要となることが多いので、個人が特定できないと判断される場合は年月までを記載してよい。

(4)他の情報と診療科名を照合することにより患者が特定され得る場合、診療科名は記載しない。

(5)既に他院などで診断・治療を受けている場合、その施設名ならびに所在地を記載しない。但し、救急医療などで搬送元の記載が不可欠の場合はこの限りではない。

(6)顔写真を提示する際には目を隠す。眼疾患の場合は、顔全体が分からないよう眼球のみ拡大写真とする。

(7)症例を特定できる生検、剖検、画像情報に含まれる番号などは削除する。

(8)以上の配慮をしても個人が特定化される可能性のある場合は、発表に関する同意を患者自身(または遺族か代理人、小児では保護者)から得るか、倫理委員会の承認を得る。

(9)遺伝性疾患やヒトゲノム・遺伝子解析を伴う症例報告では「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」(文部科学省、厚生労働省及び経済産業省)(平成13年3月29日、平成16年12月28日全部改正、平成17年6月29日一部改正、平成20年12月1日一部改正)による規程を遵守する。

平成16年4月6日
(平成21年12月2日一部改正)