GLIM基準とは

世界の主要な臨床栄養学会が協力し、「Global Leadership Initiative on Malnutrition (GLIM)」として、新しい成人の低栄養診断基準を提唱しました。GLIM基準は、従来の食物摂取不足による低栄養に加え、医療施設における疾患関連性低栄養も考慮されており、低栄養の診断及び栄養治療における世界標準の基準、“世界の共通言語”となることが期待されています。

GLIM基準誕生の背景

低栄養は、病院の入院患者や外来患者、高齢者施設の入所者など、世界中の様々な療養環境にいる人々に悪影響を与えます。低栄養によって引き起こされる治療効果の低下や合併症リスクの増加は、臨床アウトカムの悪化と密接に関連しています。このため、医療機関では低栄養対策が重要な課題となっています。しかし、国際的な低栄養診断基準は定まっておらず、国や地域による基準の差異は、国際的な低栄養対策の研究や協力に支障を来してきました。GLIM基準は、これらの問題を解決するために世界の主要な栄養学関連学会が協力して開発されました。この基準により、世界的に一貫した栄養状態の評価が可能となり、より効果的な栄養治療が提供されることが期待されます。

GLIM基準による低栄養診断のアプローチ

GLIM基準による低栄養診断は、初めに栄養リスクのスクリーニングを行い、次に栄養リスク症例に低栄養診断を行います。さらに、必要に応じて重症度の判定を行うという、以下の様なプロセスになります。

栄養リスクスクリーニング

全ての対象者に対し、検証済みのスクリーニングツール(例:MUST、NRS-2002、MNA®-SFなど)を用いて、栄養スクリーニングを実施し、栄養リスクのある症例を特定します。

低栄養診断の確定

栄養リスクがあると判定された症例に対し低栄養診断を行います。低栄養の診断指標には表現型基準3項目(意図しない体重減少、低BMI、筋肉量減少)と病因基準2項目(食事摂取量減少/消化吸収能低下、疾患による負荷/炎症反応)があり、両基準からそれぞれ1つ以上の項目が該当する場合、低栄養と診断します。

重症度判定

低栄養と診断された症例については、表現型基準の3項目において、より高度な基準値を超えたものが一つでもある場合は重度低栄養、そうでない場合は中等度低栄養と判定します。

図 GLIM基準による低栄養診断のプロセス

略語 MUST, Malnutrition Universal Screening Tool; NRS-2002, Nutritional Risk Screening 2002; MNA®-SF,Mini Nutritional Assessment Short-Form; BMI, body mass index; DEXA, Dual energy X-ray Absorptiometry
参考文献 Cederholm T, et al. GLIM criteria for the diagnosis of malnutrition ‒ A consensus report from the global clinical nutrition community. Clinical Nutrition 2019; 38:1‒9. https://doi.org/10.1016/j.clnu.2018.08.002.

2024年3月22日改訂版