要旨
【目的】胃がん手術患者は年々高齢化しており,嚥下障害は術後の経口摂取ひいては合併症に係る重要な問題である.そこで,術前・術後経口摂取開始前の舌圧,嚥下内視鏡による客観的な嚥下機能評価と誤嚥性肺炎合併症の関連について検討した.【対象および方法】呼吸器合併症の既往がない,胃がんと診断され手術療法を実施した70 歳以上の患者54 例を対象とした.術後に肺炎の合併ありA 群6 例と,肺炎の合併なしB 群48 例に分けて,手術時年齢,病期,術式,手術時間,出血量,術後呼吸器合併症,舌圧,嚥下内視鏡のスコア評価を両群間で比較した.【結果】嚥下内視鏡評価は,術前・術後ともにA 群で有意に高かった.一方,舌圧と誤嚥性肺炎との間に有意な相関は認めなかった.【結論】術前・術後の嚥下障害は誤嚥性肺炎発症に関連しており,その合併を予防するためには,早期に嚥下リハビリテーション介入が望ましいと考えられた.