要旨
37 歳男性.抗NMDA 受容体脳炎のため入院加療中のところ,痙攣様症状ならびに不穏症状があったため,バルプロ酸ナトリウム(以下,VPA と略)を十二指腸カテーテルより投与開始した.不穏症状が持続していたためVPA の最低血中濃度(以下,トラフ値と略)を測定したところ17.8 μg/mL と低値であり,TDM に基づき2,100 mg/ 日まで増量したが,VPA のトラフ値は治療域以下であった.そこで経腸栄養剤とVPA の投与タイミングを検討するとともに,栄養カテーテルの自己抜去にともない,先端の留置部位を胃内に変更したこともあり,VPA のトラフ値は61.2 μg/mL へ上昇した.VPA と経腸栄養剤の投与間隔を30 分あけることによりVPA の吸収に対する経腸栄養剤の影響を軽減したことに加え,栄養カテーテル先端位置が胃内となり,胃や十二指腸から吸収されるようになったことで,血中濃度が上昇したと考えられた症例であった.