要旨
今回我々は,異なる臨床経過をたどった十二指腸縫合不全による重症病態を経験した.症例1 は88 歳,女性.胆嚢十二指腸瘻に対する胆嚢摘出術,大網被覆術,胃空腸吻合術施行後の患者で,術後2 病日より十二指腸皮膚瘻および腹腔内膿瘍を併発したが,術後60 病日まで経腸栄養を開始できず,呼吸不全や感染症の治療に難渋した.経腸栄養開始後も,下痢や胃内停滞などの理由により十分に投与量を増やすことができず,人工呼吸器を離脱できないまま施設転所となった.症例2 は82 歳,男性.十二指腸潰瘍穿孔による汎発性腹膜炎で,穿孔部の硬化のため縫合閉鎖が行えず,大網被覆術,胃空腸吻合術に加え,上部空腸に経空腸栄養カテーテルを留置した.術後に胃排泄遅延を生じたが,早期より経腸栄養を開始,術後17 病日に抜管し,62 病日に自宅退院となった.難治性瘻孔などの局所的消化管合併症が懸念され,経口摂取が困難であると予想される症例には,空腸からの栄養投与経路を確保し,術後の経腸栄養を安全に施行することが望ましいと考えられた.
学会誌JSPEN Vol.3 No.3
異なる臨床経過をたどった十二指腸縫合不全2例に対する栄養療法の経験:経空腸カテーテルの重要性
著者
眞田雄市
所属
社会医療法人喜悦会 那珂川病院 消化器外科
キーワード
十二指腸縫合不全,経腸栄養,経空腸栄養カテーテル