要旨
2型糖尿病既往があり,中等度栄養不良の83歳女性に発症した歯性感染症由来の深頸部膿瘍に対して,当院早期経腸栄養開始プロトコルを用いて栄養管理した症例を報告する.初診日に全身麻酔下経皮的切開排膿術を要し,術後は気管挿管のまま管理した.術後3時間から10mL/時の速度で経鼻胃管より消化態栄養剤の持続投与を開始し,24時間毎に投与量を上げた.嚥下障害が出現していないことを確認し,第6病日から経口食を開始した.術直後からの早期経腸栄養と抗菌薬投与や膿瘍腔洗浄により,経時的に消炎が得られ,第17病日に退院となった.深頸部膿瘍では消化管機能障害は出現していないと推察され,早期経腸栄養が可能な疾患と考えられる.消炎治療と併行して早期経腸栄養開始プロトコルを用いることで,低栄養状態であってもリフィーディング症候群などの合併症はなく,早期に栄養状態改善し,良好な結果が得られると考えられた.