要旨
術後縫合不全に対する経腸栄養による治療中に下痢を併発した症例に対し,水溶性アルギン酸含有粘度可変型流動食(マーメッドプラス®)の空腸瘻からの投与により便性と栄養状態が改善し,縫合不全の治癒に至った症例を経験したので報告する.症例は83歳男性.2018年12月に食道胃接合部がんに対し下部食道噴門側胃切除術を行い,空腸間置法にて再建し,同時に空腸瘻も造設した.術後12病日に発熱を認め,食道空腸吻合部の縫合不全と診断し,絶食および胃管による減圧と抗菌薬の投与を行った.栄養管理は経静脈栄養に加え,空腸瘻からのペプタメン®スタンダード投与量を漸増したが,術後20病日から水様下痢となった.経腸栄養剤投与速度の調節などを試みたが下痢が持続したため,術後28病日に経腸栄養剤をマーメッドプラス®に変更した.変更後は便性が改善し,1,980kcalまで投与量を増加し得た.栄養状態の改善にともない縫合不全は治癒し,術後64病日に退院した.経空腸での経腸栄養中の下痢に対して,アルギン酸含有流動食の使用は考慮すべき選択肢の1つとなる.
学会誌JSPEN Vol.3 No.5
噴門側胃切除術後縫合不全治療中の下痢に対しアルギン酸ナトリウム含有流動食の経空腸的投与が有効であった1例
著者
町野 翔,斎藤拓朗,添田暢俊,押部郁朗
所属
福島県立医科大学会津医療センター 外科学講座
キーワード
アルギン酸ナトリウム,経腸栄養,下痢