要旨
気道熱傷患者は摂食嚥下障害のリスクが高いが,その評価や摂食嚥下リハビリテーションに関する報告は少ない.症例は61歳,男性.201X年Y月,顔面に油を受け,熱気を吸い込んだことによる気道熱傷が疑われ,気管挿管,人工呼吸管理を受けた.外見の熱傷は軽度であったため抜管後に経口摂取を試みたが,嚥下困難の訴えがあったため,NST摂食嚥下チームが介入した.嚥下内視鏡検査(videoendoscopic examination of swallowing;以下,VEと略)により咽喉頭の器質的異常や誤嚥を認め,重度の摂食嚥下障害と判断した.定期的にVEを行いながらその所見を参考に嚥下リハを行い,約50日で全量経口摂取が可能となった.気道熱傷では,外見上熱傷が軽度でも重度の嚥下障害を呈している可能性があり,VEにより器質的異常や誤嚥リスクを評価し,嚥下リハの方針を立てる必要があると思われた.
学会誌JSPEN Vol.3 No.5
嚥下内視鏡検査を積極的に用いて摂食嚥下リハビリテーションを行った気道熱傷患者の1例
著者
常峰かな1),東別府直紀2),西岡弘晶3)
所属
京都大学大学院医学研究科 耳鼻咽喉科・頭頸部外科1),神戸市立医療センター中央市民病院 麻酔科2),同 総合内科3)
キーワード
気道熱傷,摂食嚥下障害,嚥下内視鏡検査(VE)