昨年から日本のみならず世界中を席巻してきたCOVID-19感染症ですが,わが国ではここ数日,東京,大阪でも新規感染者数は20~30人前後,全国的にも200人を切るようになってきました.緊急事態宣言が解除され約2カ月が経とうとしており,街中も少しは以前の活気が戻ってきたような感じがしますが,本格的な冬の到来を前にして,第6波がいつ来るのか不安がぬぐえない状況は続いています.
そのCOVID-19感染症の影響で,昨年の第35回臨床栄養代謝学会(佐々木雅也会長)はWeb形式で,今年の第36回学術集会(鍋谷圭宏会長)は現地開催+Webのハイブリッド形式での開催となり,会員にとっては大変寂しい2年間であったと思います.確かに演題発表やセミナーの聴講は,自宅で,あるいは病院でオンラインを通じて行うことは可能です.しかし現地開催でしか味わえない,普段電話やメールでしかやりとりができない仲間に直接会って,相手の顔を見ながら話をして一緒に食事をすることで新しい発見が生まれ,日常のストレス発散もできて,「よし,また頑張るぞ!」という気分になることが,ほぼ2年間閉ざされてきているわけで,皆さん本当に鬱々とした気分になっておられることと思います.こういった状況もあり,来年5月31日,6月1日に予定されている第37回学術集会(飯島正平会長)は,ぜひ現地開催していただき,いつも通りの盛会を期待したいものです.
さて,今回刊行される学会誌JSPENVol.3No.5ですが,2本の原著論文,2本の臨床経験,3本の症例報告で構成されております.特に外科医の視点からは高橋治城氏,町野翔氏,宮崎慎一氏の論文は,日常から疑問に思っていたことに対する回答のような内容で,明日からの実臨床に極めて有用であると思われました.その他,嚥下障害ならびにそのリハビリに関する論文が2編,回復期リハビリの高齢者に対するBCAA投与の有用性に関する論文が1編,国際栄養調査2014のデータをもとに,ICU患者における栄養アセスメントの有無が,栄養投与量,経腸栄養投与開始までの日数に関連していることを示した論文が1編掲載されており,いずれの論文も非常にPracticalで興味深く拝読させていただきました.会員の皆様にも是非ご一読いただきたいと思います.
これまで本学会の編集委員として多くの論文を拝読し,また査読もさせていただいてまいりました.その経験から,特に若手の投稿者にお願いしたいことは,①投稿規定(改訂されていることがあります)をしっかり読んで,それに従ってください,②出来上がった論文は必ず指導者に見ていただき,文章の構成や内容はもとより,「てにをは」に至るまでしっかり指導を受けてください(今後投稿者のみならず,指導者にも査読結果が返信されることになると思います),③論文作成にあたって,目的は何かをはっきりさせた論文にしてください.「○○の検討」というタイトルの投稿論文が多いのですが,調べた内容をすべて結果として記載し,その結果の持つ意味が何かを考察できていない論文が目立ちます.ポイントを絞った研究論文をお願いしたいと思います.
近年SDGs(SustainableDevelopmentGoals)「持続可能な開発目標」という文言をあちこちで耳にしますが,もともと2015年の国連サミットで採択された,2030年までの15年間に達成させるための目標であります.17の大きな目標が掲げられていますが,その中に「飢餓をゼロに」「すべての人に健康と福祉を」の2項目があげられています.医療先進国であり栄養満点の日本ではあまりピンとこない目標とは思いますが,世界中にはこの目標の達成を待ち望んでおられる人々が多数おられます.私たちは,現状のあるいは自施設内での医療,特に栄養治療に満足することなく,グローバルな視点をもってこれからの栄養療法を考えていく必要があると思います.今後,本誌においてもかかる視点に立った投稿が寄せられることを期待しております.
2021年11月吉日
e-journal「学会誌 JSPEN」編集委員
馬場記念病院 大平雅一
編集委員会
委 員 長:鍋谷圭宏
副委員長:千葉正博
編集委員:大平雅一 小山 諭 立石 渉
長沼 篤 林 宏行 丸山常彦
森實敏夫
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学会誌JSPEN Vol.3 No.5
令和3年11月26日発行
一般社団法人 日本臨床栄養代謝学会
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