2022 年に入ったが,1 月からCOVID-19 は全国各地でオミクロン株が猛威を奮い,多くの都道府県で「まん延防止等重点措置」が発令されている状況である.オミクロン株は重症化率が低いなどと言われているものの感染者および濃厚接触者数の爆発的な増加により,社会活動がさまざまな面で制限されてきており,職種によっては死活問題になってきている.政治家やお役人は“専門家”の見解をある程度は参考にしつつ方針を決めようとしているようであり,一方,マスコミはそれぞれお抱えの“専門家”の主張を前面に出してオミクロン株の脅威を国民に植え付けている.我々はCOVID-19 にいつまで怯えていなければならないのか? COVID-19 克服への最善の方法や正解は世界中の誰も判らないのであろうが,だからこそ自分にとって都合の良い“専門家”の意見をそれぞれの立ち位置で取り上げるべきではなく,また,キャッチフレーズ的な見出しで煽るのではなく,意見の異なる“専門家”同士が十分にDiscussionした上での見解を基に方向性を示していくべきであると考える.
意見の異なる“専門家”同士での十分な討論は学術の場であり,本年,5 月31 日・6 月1 日に開催される第37 回日本臨床栄養代謝学会学術集会は是非ともCOVID-19 が収束し,臨床栄養に携わるもの同志が集い,対面で真摯な意見をぶつけ合う場になってほしいと切に願っている.また,学術論文においては,Discussion・考察が,執筆者が得た研究結果を自身の中で討論し,さらに査読者との十分な議論を通じて自らの研究成果を位置付けることに値するとても重要なpart である.
さて,2 月25 日刊行の学会誌JSPEN 本号であるが,原著論文は,吉沢和也氏による心不全患者入院中の食事摂取量と退院時下肢筋力との関連,衛藤恵美氏による回復期での高齢脳卒中患者の口腔機能と在宅退院との関連,の2 編である.症例報告は,桒原尚太氏による化学療法施行中の小空腸瘻造設症例に対する腸液返還の有効性,三松謙司氏による混合型食道裂孔ヘルニア併発幽門狭窄胃癌での通過障害・栄養障害に対するW-ED チューブ術前経腸栄養の有用性,白石 渉氏による経口摂取不良・極度低栄養による血小板減少症,の3 編が掲載されている.さらに研究報告として,斎藤恵子氏による外来クローン病患者での生体インピーダンス法による体組成評価,が1 編である.用語解説では,抗酸化物質であるカテキンについて杉山彰英氏が解説して下さった.
本号のいずれの論文も執筆者が査読者との真摯な議論の下,十分にDiscussion・考察された内容であり,是非ご一読していただきたいと考えている.
2022 年2 月吉日
e-journal「学会誌 JSPEN」編集委員
新潟大学大学院保健学研究科 小山 諭
編集委員会
委 員 長:鍋谷圭宏
副委員長:千葉正博
編集委員:大平雅一 小山 諭 立石 渉
長沼 篤 林 宏行 丸山常彦
森實敏夫
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学会誌JSPEN Vol.4 No.1
令和4年2月25日発行
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