要旨
【目的】同種造血幹細胞移植患者の味覚異常の実態を把握するために,前向き縦断調査を施行した.【対象および方法】北海道大学病院血液内科で2015 年7 月から2018 年8 月までに同種造血幹細胞移植を予定した107 名を対象とした.移植前から移植後12 カ月までの期間に計5 回,全口腔法による味覚機能検査とNRS による味覚異常の自己評価を行った.【結果】移植前のNRS では,4 つの味質全てで10 ~ 20% の味覚異常が既に認められた.移植後の全口腔法とNRS の両方において,塩味が最も高率に障害され,回復も移植後12 カ月目の時点で最も遷延した.味覚異常の性状は,移植後1 カ月目は全味質で味覚減退の割合が高かったが,3 カ月目以降は味覚過敏の方が高くなった.【結論】塩味が最も障害され回復も遷延した.全ての味質で移植後早期は味覚減退,その後味覚過敏の割合が高くなった.味覚異常の自覚症状と味覚検査との間に整合性は認められなかった.