要旨
症例は60 歳代女性.血液透析中に非閉塞性腸間膜虚血(non-occlusive mesenteric ischemia;以下,NOMI と略)を発症し広範囲小腸切除および双孔式人工肛門造設術を施行し,トライツ靭帯から90cm の部位で空腸瘻となった.空腸瘻患者では消化液喪失などが問題となり低栄養に陥りやすいため,「空腸ストーマより排出された腸液を濾過し,回腸粘液瘻へ再注入すること」(以下,この手技を「腸液返還」と略)を導入し,静脈栄養とシンバイオティクス療法を併用して栄養管理を行った.最終的には人工肛門を閉鎖し,中心静脈栄養を離脱して経口摂取のみで退院した.空腸瘻となった患者の全身管理法として,「腸液返還」は非常に有用な手技であると思われる.
学会誌JSPEN Vol.1 No.2
血液透析中に非閉塞性腸間膜虚血(NOMI)を発症し空腸ストーマ・回腸粘液瘻となった症例に対して行った「腸液返還」の経験
著者
天野香世子1),川合亮佑2),鮫島 碧1),福海奈歩3),大村泰正3),松島 暁4),宮地正彦2)
所属
掛川市・袋井市病院企業団立 中東遠総合医療センター 栄養室1),同 外科2),同 看護部3),同 救急科4)
キーワード
腸液返還,NOMI,空腸瘻