要旨
症例は60 歳代女性.血液透析中に非閉塞性腸間膜虚血(non-occlusive mesenteric ischemia;以下,NOMI と略)を発症し広範囲小腸切除および双孔式人工肛門造設術を施行し,トライツ靭帯から90cm の部位で空腸瘻となった.空腸瘻患者では消化液喪失などが問題となり低栄養に陥りやすいため,「空腸ストーマより排出された腸液を濾過し,回腸粘液瘻へ再注入すること」(以下,この手技を「腸液返還」と略)を導入し,静脈栄養とシンバイオティクス療法を併用して栄養管理を行った.最終的には人工肛門を閉鎖し,中心静脈栄養を離脱して経口摂取のみで退院した.空腸瘻となった患者の全身管理法として,「腸液返還」は非常に有用な手技であると思われる.