要旨
【目的】胃がんの切除手術例における術後1年の貧血の状態と関連する栄養素の充足度を切除術式別に検討した.【対象と方法】2016年12月から2020年4月に胃がんの切除手術を受け,術後1年に受診できた100例を対象とした.貧血の状態と血清鉄,ビタミンB12,血清亜鉛,葉酸の値を胃が残る術式と胃全摘術,食物の十二指腸通過の有無別に比較した.【結果】胃全摘術例はヘモグロビン値が低く低栄養であり,血清鉄,ビタミンB12,血清亜鉛が低値であった.十二指腸をバイパスする術式も同様の結果で,赤血球分布幅が高かった.フェリチン低値かつビタミンB12低値の症例が最も小球性と低色素性を示し赤血球分布幅が高かった.血清亜鉛値は血清鉄値と弱い正の相関を示した.【結論】胃がん術後1年にはすでに多くの貧血関連栄養素欠乏を生じており,原因を正しく診断して適切な栄養指導や投薬を行うべきである.