新型コロナウイルス感染防止のためのこの2 年間,自粛~自粛の毎日のためか,新たな社会問題が見られるようになった.身近なところでは,公共交通機関内でのマスクに関する争いや乗車拒否.馴染みの飲み屋があいついで閉鎖したと思えば,家時間が長くなり宅飲みが増加したためか,逆に病院ではアルコール依存の患者の搬送が急増した.過度の飲酒など一般的には愚かしい行為と言われるものだが,他人に迷惑をかけさえしなければ違法でない.だれでも自由に生きていくことができる権利を持っており,一般的には“愚行権”と言われている.
先日,自宅の大家と話をしていたときである(大家はロシア人とドイツ人のハーフで,祖父はロシアの将校であったそうだ).ロシアからすれば,今回の騒動は旧ソ連やそれ以前のロシア帝国の領土を含む正当な勢力圏を主張するための行動であり,精神的・伝統的価値観や信じる宗教(ロシア正教)への西欧諸国からの侵害に対抗するための措置だそうである.いうなれば,ローマにおける十字軍遠征やQ アノンの連邦議会議事堂襲撃事件などと同一?の,それぞれの信念にもとづく行動である.表層的ばかりでなく深層のダイバーシティをどこまで許容すべきか中々結論は難しいが,最終的に二人で合致した意見は,「子供を含む市民が沢山犠牲となる,なにも戦争でなくても.」ということである.
また別日に,こんなことがあった.在宅で看取りを希望された進行胃がんの患者様である.消化管の通過障害が強く,腸閉塞を起こすからと絶食となり胃ろうからの栄養管理のみとなっていた.ある日,急に思い立ったのか「温泉に行き美味しいものでも食べよう!」と誘われた.その時に言われた一言が~「病院の先生の言うことを聞いていれば,きっと長生きはできることと思うが,大好きなことが何も出来ないのでは……」「でも,先生には迷惑かけたくないし……」.このような場合“愚行権”(愚行権と言うべきでなく,この場合は“幸福追求権”と呼ぶべきであろうか?)を行使すべきか否か狭間で揺れ動く今日この頃である.(愚行権・幸福追求権とロシア)
2022 年8 月吉日
e-journal「学会誌 JSPEN」編集委員
昭和大学薬学部臨床薬学講座臨床栄養代謝学部門 千葉正博
編集委員会
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森實敏夫
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学会誌JSPEN Vol.4 No.3
令和4年8月10日発行
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