要旨
近年の胃がん患者の高齢化に加えて,進行胃がん患者では,胃がんに伴う栄養摂取困難や担がん状態による身体への影響も合わさって,術前に栄養状態が不良である胃がん患者を治療することが少なくない.サルコペニアに代表されるこれら術前栄養状態の不良が,術後短期成績を不良にし,がんの長期予後も低下させる可能性が報告されている.また,外科治療後には胃切除に伴う食事摂取量の減少や,消化・吸収障害から様々な栄養状態の不良をきたすことが知られており,これら術後体重減少や筋肉量の減少が予後に悪影響をおよぼすことも知られている.これらへの対策として,周術期の栄養介入が臨床試験として行われ,一定の効果は報告されているが,さらなる治療成績の向上を目指して,栄養剤の服薬アドヒアランスを上げる工夫や,運動療法併用の有用性等も報告されている.本稿では,これら近年の胃がん診療における栄養管理の重要性に関する報告を紹介する.