要旨
【はじめに】「亜鉛欠乏症の治療指針」により亜鉛測定や補充機会が増えている.亜鉛投与は腸管での銅吸収低下をきたすため両者の測定が推奨されている.亜鉛・銅欠乏時,本邦では銅製剤はなく,治療法は確立していない.亜鉛欠乏は創傷治癒遅延,銅欠乏は好中球減少等を引き起こすため治療が必要である.今回,亜鉛・銅欠乏を合併した難治性創傷に対し高カロリー輸液用複合微量元素製剤(以下,複合微量元素製剤と略)を用い,両者欠乏を補い奏功した症例を経験した.【症例】パーキンソン病と幽門側胃切除術後の70代女性.大腿骨頸部骨折で入院し,人工骨頭置換術後,創部離開した.亜鉛銅含有経腸栄養剤,酢酸亜鉛で推奨量を補ったが,亜鉛・銅欠乏を認めた.複合微量元素製剤を末梢静脈投与後,両者の値は上昇し,その後創傷は改善・閉鎖術で治癒した.【考察/結語】吸収不全や排泄増加による亜鉛・銅欠乏例では,複合微量元素製剤の静注が有効な可能性がある.
学会誌JSPEN Vol.4 No.4-5
複合微量元素製剤末梢静脈投与が有効であった亜鉛・銅欠乏合併難治性創傷の1例
著者
吉田 稔1,2),角 和恵3),宮城朋果4),内藤みなみ4),田中優子3),岡田晋一郎5),斎藤浩輝2),毛利 健7),吉田 徹2
所属
1)横須賀市立うわまち病院 集中治療部, 2) 聖マリアンナ医科大学 救急医学, 3) 横須賀市立うわまち病院 看護部, 4) 横須賀市立うわまち病院 栄養科, 5) 横須賀市立うわまち病院 外科, 6) 横須賀市立うわまち病院 総合診療センター, 7) 横須賀市立うわまち病院 小児外科
キーワード
銅欠乏,亜鉛欠乏,高カロリー輸液用複合微量元素製剤
DOI
10.11244/ejspen.4.4-5_183