要旨
大腿静脈ルートでの皮下埋め込み型中心静脈アクセスポート(central venous port;以下,CVポートと略)留置による静脈栄養管理は感染症や血栓症のリスクが高く,通常は推奨されない.2005年空腸デスモイドに対して小腸切除術を施行中に,上腸間膜動脈を損傷し大量小腸切除と空腸ストマ造設を行った.結果的に短腸症候群となりCVポートによる静脈栄養管理を導入したが,カテーテル感染を繰り返し,CVポートの抜去と造設を何度も必要とした.経過中に両側内頸静脈から鎖骨下静脈合流部に狭窄をきたし,上大静脈内へのカテーテル留置が困難となり,大腿静脈ルートでCVポートを造設した.その後,カテーテル閉塞とセプタムの露出はあったが,経路変更や感染症の合併はなく現在まで経過している.ポート留置の工夫と適切な管理により,大腿静脈ルートでもCVポートを用いた長期の中心静脈栄養管理は可能であり,選択肢になり得ると思われた.