要旨
【はじめに】甲状腺未分化がんは極めて予後不良で稀な組織型である.嚥下障害をきたした際の胃瘻の適応は明確でない.この度,切除不能甲状腺未分化がんに対し胃瘻を造設し栄養管理を試みた症例を報告する.【症例1】診断時は全身状態が保たれており,胃瘻造設後の薬物療法を計画した.しかし,日単位で原病が進行し,胃瘻造設後第4病日に上気道閉塞により死亡した.【症例2】胃瘻を用いて栄養を維持しつつ外来で化学放射線療法を約4カ月間施行し,一定の疼痛緩和と嚥下困難感の改善が得られた.終末期には自己排痰が困難となったため,経管栄養を漸減した.【結論】嚥下障害を伴う甲状腺未分化がんの診断となれば,局所の進行が早いため,速やかに胃瘻を造設し栄養管理を行い,集学的治療によりQuality of life の改善と延命を図ることが肝要である.一方で,予後が厳しい症例や喀痰排出障害が著しい症例は,経鼻経管栄養の選択や,経管栄養の減量および静脈栄養への移行を考慮すべきと思われた.
学会誌JSPEN Vol.5 No.1
嚥下障害に対し胃瘻を造設して栄養管理を行った切除不能甲状腺未分化がんの2例
著者
郷右近祐介,中西 渉,鳩山恵一朗,阿部隆之
所属
岩手県立磐井病院 外科
キーワード
甲状腺,未分化がん,胃瘻
DOI
10.11244/ejspen.5.1_43