2021年4月から学会誌JSPEN(以下,本誌)の編集委員長を拝命し,2年経過しました.千葉正博副委員長はじめ7人の編集委員の先生方のご尽力で,編集業務もようやく軌道にのってきたところでしたが,この春のJSPEN 委員会再編により編集委員長を亀井尚先生(東北大学教授)に交代することとなりました.これまで投稿いただいた会員の皆様,ご多忙の中で査読して頂き論文の形を整えて下さった先生方,そして読者の皆様,本当に有り難うございました.「栄養学関連の和文誌の最高峰」を目指して私なりに情熱を持って編集業務に取り組んで来ましたので,志半ばで交代するのは本音は少し残念です.しかし,今後はより広い視野でJSPEN 全体のために与えられた職務を全うせねば,と気持ちを新たにしているところです.本誌は引き続き,比企理事長と亀井編集委員長のリーダーシップの下でさらに発展していくと信じておりますので,会員の皆様におかれましては,これまで以上に積極的な投稿をお願い致します.
私が編集委員長として投稿者に期待することは,本誌3 巻3 号の編集後記に述べました.特に,本文も抄録も,最も発信したい「事前的視点」でのメッセージを結語に書くこと,著者全員での投稿前の推敲の重要性を強調しましたが,今も変わらない想いです.一方で,この2 年間に,「査読」について考えることがしばしばありましたので,最後となる編集後記に(少し長くなりますが)述べさせていただきます.
これまで私は,自分が査読した論文に対する他の先生の意見を必ず熟読するようにしてきました(自分で見に行かないと見れないことも多いですが)が,これは,自身の査読・判断能力を高める上でとても重要です.本誌編集においても,私自身は査読者の一人のつもりで論文は全て熟読し,さらなる向上のためのメッセージを担当の編集委員の先生と共に考えました.採択率も少し下がり,以前より厳しくなったというご意見もいただきましたが,公正に判定されていたと考えています.しかし,いうまでもなく,「査読」はボランティア業務であり,雑誌の編集や査読は業績にはなりません.「良い論文を世に出すための陰のお手伝い」ですが,実際にはかなりの時間と労力を要します.本誌の編集とは関係ありませんが,某大学教授の先生が「ただでやる査読と原稿料が極めて安い単行本の執筆が重荷」と話していたことがありますが,皆さん本音はその通りかもしれません.本誌では原則的にJSPEN代議員あるいは学術評議員の先生に査読を依頼しますが,査読を断る先生も時にいらっしゃいますし,受けられても,「本誌への掲載は不適切」とか「いい論文です」など一言のみで,精読されていないと思われる評価をいただくことがあり,これは本当に残念に思いました.査読を行う(引き受ける)ことだけが資格更新のための点数になることも影響しているかもしれません.
しかし,論文や学会発表の業績と同様に,いやそれ以上に査読でその先生の評価が高くも低くもなります.氏名がブラインドだと,日頃拝見するその先生の態度や私が接した時の会話とイメージが違う?査読意見をいただくこともあり,(素顔が分かる?)査読意見を見るのは実は楽しみでもあります.以前に,某学会雑誌に査読が不十分と思われる論文が掲載され,私の過去の論文も全く異なる内容で引用されていたことがあり,Letter to the editor を新たに作っていただき,著者と誌上で討論したことがありました.質疑応答は著者とでしたが,私の本音は「(その論文を査読した先生に)査読をきちんとやって下さい!」という陰のメッセージでした.そんなこともあって,私はこの2年間に本誌で査読頂いた先生方のご意見は全て読みましたが,本誌に限らず熱心な先生にはぜひまた査読をお願いしたいと思うと同時に,編集委員や学会の司会をお願いしたい,本の執筆依頼をしたい,と感じることが少なくありません.一方で,前述の通り極めて短いコメントのみで返されたりすると,それが編集委員会で共有されることもあります.査読を担当される先生には,ぜひとも教育的な査読で,学会員と本誌を育てていただきたいと思います.
本誌では毎年,優秀査読者賞を設けて査読が高評価であった先生を表彰しています.受賞された先生は,ぜひ励みにして本誌発展のために一層ご尽力いただきたいと思います.私自身,かつてClinical Nutrition で自分の査読が初めて高く評価されたことが,とても励みになりました.その後,JSPEN の公式英文誌Ann NutrMetab やAnn Gastroenterol Surg, World J Surg といった英文誌でも自分の査読が評価されたことが契機となって,Associate Editor やEditorial Board に加えていただくことに繋がりました.現在も編集委員長を担当している日本腹部救急医学会雑誌など本誌以外の和文誌でも様々な経験を積んで,「良い論文を世に出すための陰のお手伝い」が少し分かってきた(自分が査読した論文が世に出て引用されるようになると,とても嬉しい気分になりますが,それは私だけでしょうか?)ので,投稿者だけでなく,査読者,そして失礼は承知で編集委員の先生にも時にコメントさせていただきました.不愉快に思われた先生もいらっしゃったかもしれませんが,どうかご容赦下さい.
さて,今回お届けする本誌5巻第2号は,私がacceptの判定をした最後の5編の論文が掲載されています.いずれも,厳しい査読意見に対して適切な加筆修正が行われ,発信価値のある良い論文に仕上がっていますので,ぜひとも読んで,今後の日常臨床に役立てていただきたいと思います.
最後に,この2年間編集業務に多大なご尽力をいただいたJSPEN 学会事務局の加藤綾子さん(どこかで見た名前?),瀧田実隆事務局長,中西印刷の大久保利英さん,杉山彰吾さん,高塚志野さんに心から感謝致します.亀井編集委員長の下での本誌の更なる発展を願い,今後は一人の読者として見守りたいと思います.本当に有り難うございました.
2023年5月吉日
e-journal「学会誌 JSPEN」編集委員会
顧問(前編集委員長)
千葉県がんセンター 副病院長(食道・胃腸外科)
鍋谷圭宏
編集委員会
委 員 長:亀井 尚
副委員長:千葉正博
編集委員:天野良亮 井田 智 神谷貴樹
立石 渉 長沼 篤 中山真美
森實敏夫
顧 問:鍋谷圭宏
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学会誌JSPEN Vol.5 No.2
令和5年5月19日発行
一般社団法人 日本臨床栄養代謝学会
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喜助日本橋室町ビル4階
TEL:03-6263-2580 FAX:03-6263-2581
MAIL:jimukyoku@jspen.or.jp
ジャーナル制作 中西印刷株式会社
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Ⓒ2023 by Japanese Society for Clinical Nutrition and Metabolism
学会誌JSPEN Vol.5 No.2