神経性やせ症(anorexia nervosa;以下,ANと略)では,様々な臓器障害を合併し,治療に難渋する.今回,重症AN治療中,血清リン値の激減により心停止となった症例を経験した.症例は19歳,女性.AN治療中,意識障害となり,前医より転院となった.来院時,body mass index:10.7 kg/m2とるい痩著明,ショック状態であり,輸液,カテコラミン投与を行った.Refeeding syndromeの高リスクであったが,低血糖と肝機能障害があり,糖質投与にて予定とした初期エネルギー投与より増加した.血清リン値は正常であったが,翌日に激減し,心停止となった.以後,リンの補充を行い,循環は安定した.本症例のように低血糖があるANでは,ある一定以上のエネルギー投与は避けられず,血清リン値が激減する可能性があり,血清リン値が正常であっても,再栄養開始とともに頻回に血清リン値を測定し,リン製剤の補充のタイミングを逸さないことが重要である.
学会誌JSPEN Vol.5 No.3-4
治療中に心停止をきたした低血糖を伴う重症神経性やせ症の一例
著者
金村剛宗1),吉川恵子2),関 徹也3),松永恭典1),守屋まりこ1)
所属
1) 東京医科大学八王子医療センター 救命救急センター,2) 東京医科大学八王子医療センター 腎臓内科,3) 東京医科大学八王子医療センター 栄養管理科
キーワード
神経性やせ症,血清リン,低血糖
DOI
10.11244/ejspen.5.3-4_119
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