本症例は心臓移植待機中に,敗血症を契機として代謝性アシドーシス,高アンモニア血症を伴う代謝クライシスを発症し,プロピオン酸血症と診断された.代謝クライシス急性期には投与する糖や蛋白質の増量に伴い,乳酸値の上昇や血清アンモニア値の上昇を認めた.その後,心臓移植を含む2度の侵襲的手術を実施したが,新生児マススクリーニング対象疾患等診療ガイドラインと本症例の代謝クライシス発症時の経験に基づき,安全に栄養管理を実施し得た.安定期には無症状の軽症プロピオン酸血症症例であっても,感染症,手術,飢餓等の異化亢進ストレスを契機に代謝クライシスを発症するリスクがある.このような状況での栄養管理として,患者個々の糖や蛋白質の代謝許容量と病態の経過に留意し,乳酸値,血清アンモニア値をモニタリングしながら栄養投与量を綿密に調節することで,プロピオン酸血症の代謝クライシスの予防と治療に貢献できる可能性がある.