【目的】胃全摘術後状態で微量元素欠乏症のリスクが最近報告されている.そこで胃全摘術後長期経過例における亜鉛・銅欠乏症の確認と補充療法を行った.【方法】胃全摘術後5年以上経過した貧血合併症例を対象に,血清亜鉛・銅のほか鉄などの貧血に関連する各種血液検査を行い,亜鉛および銅の補充療法後のこれら微量元素と貧血改善効果を検討した.結果は平均値(標準偏差)で示し,対応のあるt検定で解析した.【結果】男性5例,女性2例,平均年齢は79.0(10.5)歳であった.7例のヘモグロビン(Hb)値は平均10.5(1.2)g/dL,亜鉛値の平均は57.9(14.8)μg/dLであった.7例中亜鉛欠乏症は4例,潜在性亜鉛欠乏は3例で,銅欠乏は認めなかった.7例全例に亜鉛補充療法を行った.亜鉛補充療法で16週後の亜鉛値は118.0(30.4)μg/dL,Hb値は11.9(0.8)g/dLと,いずれも補充前より有意に上昇した.【結論】胃全摘術後長期例で認められた亜鉛欠乏症に対する亜鉛補充療法により亜鉛値と貧血が改善した.