学会誌JSPEN Vol.6 No.1
とろみ調整剤の影響が疑われたワルファリン用量調節に苦慮した1例
著者
若林仁美1),唐沢浩二2),岡本まとか2),千葉正博2),田中克巳1)
所属
1) 昭和大学薬学部病院薬剤学講座,2) 昭和大学薬学部臨床薬学講座臨床栄養代謝学部門
キーワード
ワルファリン,とろみ調整剤,相互作用
DOI
10.11244/ejspen.6.1_37
詳細
経口抗凝固剤であるワルファリンカリウム(以下,ワルファリンと略)はProthrombin Time-International Normalized Ratio(以下,PT-INRと略)をモニタリング指標として薬効評価が行われる.今回,ワルファリンの増量にPT-INRが呼応せず,用量調節に苦慮した症例を経験した.患者の経過からPT-INR低値の要因を検討したところ,とろみ調整剤の使用開始時期と一致していることが判明した.とろみ調整剤は誤嚥予防を目的に用いられ,キサンタンガムなどの水溶性食物繊維を主成分とする.近年では血糖や血圧の改善効果などを期待して様々な栄養剤に含有されるようになった一方で,医薬品の食物繊維への吸着や,とろみ調整剤による錠剤の崩壊遅延や溶出時間延長などが報告されている.本症例では,ワルファリンがとろみ調整剤に含有されるキサンタンガムと相互作用を生じたことで,PT-INRの低下をきたした可能性が示唆された.
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