症例は80歳男性.数カ月前からの全身倦怠感と体重減少を主訴に受診された.大球性貧血を認め,ビタミンB12は低値であった.胃体部優位な高度萎縮を認め,自己免疫性胃炎による悪性貧血と診断した.標準治療はビタミンB12の非経口投与であるが,高齢で日常生活動作(Activities of Daily Living;以下,ADLと略)が低く,頻回の受診が困難であった.ビタミンB12はそのほとんどが内因子を介する経路で吸収されるが,高用量を摂取した時には濃度勾配依存性に吸収される.そこでビタミンB12経口投与にて治療を開始し速やかに自覚症状と貧血は改善した.ビタミンB12経口投与が著効した自己免疫性胃炎による悪性貧血の症例は稀であり,貴重な症例と考え,文献的考察を加えてこれを報告する.