7月に入り,暑さ極まる頃となりました.令和6年度の診療報酬改定に伴ってリハビリ,栄養管理,口腔管理を中心とした多職種・同職種間連携の推進や栄養情報連携料の新設,栄養状態の評価にGlobal Leadership Initiative on Malnutrition(GLIM)基準が導入されるな ど栄養領域でも変革があり,対応に奔走されている会員も多いのではないでしょうか.
 さて,この度発刊の学会誌JSPEN Vol. 6No.3では臨床経験,症例報告,研究報告,学会参加記としてESPEN2023とASPEN2023の参加報告,国内施設研修支援制度報告記と興味深い内容が集まっております.そのなかで,今回の私の一押し論文は,「アナモレリン導入後の早期改善効果と患者予後との関連」です.
 消化器がん患者におけるアナモレリン導入後早期の体重増加や食欲不振の改善効果を評価し,関連する患者背景因子や早期改善が患者予後に与える影響を検討した研究報告です.病態の評価や血液検査に加え, GLIM基準や体成分分析と多角的な視点でアナモレリンの有用性について検討されています.早期の体重増加,食欲増進効果は導入前6 カ月以内の体重減少率が大きい患者ほど得やすく,早期改善の有無が12週間 の継続投与や3カ月,6カ月死亡率にも関連することを示されています.臨床薬剤師の視点でもアナモレリンを提案するタイミングや有効性・安全性のモニタリングについては悩む症例が多く,導入早期の改善効果を確認することの重要性を示す有用な報告です.
 また,今回は国内施設研修支援制度報告記として,7名の先生方の報告が掲載されています.学術集会や研修会でお会いした先生の実際の施設での活動に参加でき,自施設ではなかなか経験できないような専門的 なNST介入を見学できるなど,それぞれの施設の特徴を生かした有意義な研修風景が目に浮かびます.参加された先生にとっても,研修報告として言語化する過程で,研修内容をより細分化して内省し,自身の栄養治療に携わる中での悩みや課題と照らし合わせて,これからの自分自身の目標を明確にすることができたのではないでしょうか.これから研修支援制度の利用を考えておられる会員だけでなく,各職種の視点から多くの方にお読みいただければ幸いです.


2024年7月吉日
e-journal「学会誌JSPEN」編集委員会 
滋賀医科大学医学部附属病院 神谷貴樹

編集委員会
委 員 長:亀井 尚
副委員長:千葉正博
編集委員:天野良亮  井田 智  神谷貴樹
     立石 渉  長沼 篤  中山真美
     森實敏夫
顧  問:鍋谷圭宏

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学会誌JSPEN Vol.6 No3
令和6年7月31日発行

一般社団法人 日本栄養治療学会
〒103-0022 東京都中央区日本橋室町4丁目4-3
喜助日本橋室町ビル4階
MAIL:jimukyoku@jspen.or.jp

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