症例は14歳女児.West症候群と脳室周囲白質軟化症による脳性麻痺のために当院小児科をかかりつけとする児である.12歳時に胃食道逆流症状が出現し,精査加療目的に当科に紹介となった.精査の結果,胃食道逆流症とセレン欠乏症の診断となった.胃食道逆流症に対して腹腔鏡下噴門形成術および胃瘻造設術を行い,セレン欠乏症に対して逆流防止術後からセレン含有栄養補助飲料を経管投与した.術後初期は胃からの排出不良を認めたため経胃瘻的空腸チューブでの経管栄養管理を行ったが,低セレン血症の改善は得られなかった.術後2カ月時に同栄養剤の経胃瘻投与が可能となると血清セレン値は正常値になった.消化管を用いてセレン補充を行う際には投与経路によりセレン吸収が不十分となる可能性がある.本症例からはセレンの十二指腸または上部空腸での吸収が重要と考えられ,至適でない投与経路の場合には血清セレン値の改善が不十分となる可能性が示唆された.