症例は59歳,女性.19歳頃より抑うつ気分が出現し,現在まで精神科での治療を受けていた.59歳時,抗精神病薬を過量内服し救急搬送され,血液検査でRBC 291 × 104/μL,Hb 10.4 g/dL,MCV 96.2 fLと貧血を認めた.3日後,当院入院した.RBC 373 × 104/μL,Hb 9.8 g/dL,MCV 100 fLとなり,血清葉酸2.2 ng/mLと低値であったため葉酸15 mg/日の補充を41日間行った.RBC 264 × 104/μL,Hb 9.9 g/dL,MCV 101.4 fLと貧血の改善は認めなかった.網状赤血球増加,間接ビリルビン高値,胆石および脾腫の合併から慢性的な溶血を認め,溶血性貧血を疑い血色素異常症スクリーニング検査を行った.赤血球膜Band3検査にて低下,小型球状赤血球も認め遺伝性球状赤血球症(hereditary spherocytosis;以下,HSと略)と診断された.HSでは葉酸補充が推奨されているが,溶血の亢進を認める場合,葉酸を補充してもHbの増加を認めるのは困難である可能性がある.