依然として猛暑日を記録する暑さにいわゆる夏バテが続き体調維持に苦慮される方も多いかと思います.今年度,栄養管理体制の基準の見直しが行われ,「食べる」ということが非常に重視されてきています.私自身もERAS を推し進めてきたものとして,口から栄養を取るということは極めて重要と考えておりますが,周術期だけでなく在宅で生活をしていくためにも,治療効果を高めるためにも食事が大事だということを強調したいのだと思います.そのためには,管理栄養士をはじめとして,あらゆる医療従事者が共同して栄養スクリーニングを含む栄養状態の評価,栄養管理計画策定,などを実施することが求められていると考えます.
 今回の学会誌JSPEN Vol. 6 No. 4 はその栄養スクリーニングにおける嚥下機能評価と頭部挙上について検討を行った原著「摂食嚥下障害患者における頭部挙上評価と舌圧・摂食嚥下機能・栄養状態との関連について」が掲載されており,各施設においての誤嚥スクリーニングの武器として役立つものとして,私の一押し論文とさせていただきました.頭部挙上=舌骨上筋機能グレードと舌圧,摂食・嚥下障害の臨床的重症度分類,ADLとの関連性を調査し,嚥下機能低下を起こしている症例を抽出する方法の一つであることが示されています.様々な嚥下機能評価の方法があると思いますが,頭部挙上で評価する方法は,誰でもできる簡便な方法であります.これまでに利用されている様々なスクリーニング法と今回の方法を合わせて使用し,誤嚥リスク症例をより正確に抽出できるような取り組みが必要かと考えました.
 その他,セレン欠乏症という遭遇機会が低い症例の報告,うつ病,食道裂孔ヘルニアという別の基礎疾患が影響した栄養障害についての報告,NST 活動の向上を目的とした施設近況報告,NST で重要な位置を占める歯科医師・歯科衛生士のNST への関与の実態についての報告も掲載されております.
 論文には新規の内容であることは求められますが,それ以上に,教育的内容が含まれていることが重要であると編集委員として常にお伝えしています.医療における栄養の重要性はかなり高いことは認知されていますが,それでもまだ栄養に対しての対策が十分でないこと,栄養療法を行う上での悩み・課題は多いように思います.今回に限らず,掲載された論文はそれらを教えてくれる内容を常に提供してくれているはずですので,多くの方に読んでいただけることを期待いたします.重ねて,今後も,学会員の知識が広がるような,皆様の研究成果を積極的に投稿していただきたいと思います.


2024年10月吉日
e-journal「学会誌JSPEN」編集委員会 
群馬大学医学部医学系研究科総合外科学講座 循環器 外科 立石 渉

編集委員会
委 員 長:亀井 尚
副委員長:千葉正博
編集委員:天野良亮  石橋生哉  井田 智
     神谷貴樹  立石 渉  長沼 篤
     中山真美  森實敏夫
顧  問:鍋谷圭宏

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学会誌JSPEN Vol.6 No4
令和6年10月2日発行

一般社団法人 日本栄養治療学会
〒103-0022 東京都中央区日本橋室町4丁目4-3
喜助日本橋室町ビル4階
MAIL:jimukyoku@jspen.or.jp

ジャーナル制作 中西印刷株式会社
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