当院では3次救急搬送となる重症熱中症患者に対して血中セレン濃度測定を行っており,血中セレン濃度とその臨床的特徴を検討した. 2020年1月から2023年7月の間に当院に3次救急搬送となった熱中症患者のうち,血中セレン濃度測定を行った27例を対象として診療録ベースの後ろ向きコホート研究を行い,血中セレン濃度に加え,血中セレン値が正常下限を下回る症例をセレン低値群として,セレン正常群と低値群との間で患者背景,臨床所見,血液学的栄養状態の指数,治療経過と転機に差が見られるかを比較検討した. 27例中9例(33%)に,血清セレン低下例を認め,セレン正常群と比較して,セレン低値群では有意にalb,ChEが低く(alb:p = 0.01,ChE:p = 0.01),感染合併例が多かった(p < 0.05). 重症熱中症患者では,潜在的な慢性低栄養や感染合併を背景としたセレン低値症例が一定数存在することが示唆された.