学会誌JSPEN Vol.7 No.1
重症膵炎を合併した糖尿病脂血症において,リポ蛋白代謝の変化に基づく病態評価と治療計画を行った1例
著者
川名秀俊1,2),松下友美2),藍野芙季子2),橋場礼陽2),村上千晴2),野田 茜2),加藤礼子2),樋口智也2),谷中和昭2),相田俊明2)
所属
1) 千葉市立海浜病院 内科,2) 千葉市立海浜病院 NST
キーワード
糖尿病脂血症,急性膵炎,リポ蛋白代謝
DOI
10.11244/ejspen.7.1_23
詳細
飲酒歴のない40歳男性.Body mass index 26.0 kg/m2.糖尿病性ケトアシドーシス(diabetic ketoacidosis;以下,DKAと略)と急性膵炎の合併で緊急入院となった.中性脂肪1,546 mg/dLと異常高値であり,DKA→糖尿病脂血症→急性膵炎とする一連の病態が推測された.インスリンの持続静注や蛋白分解酵素阻害薬の投与などの初期治療を行い経時的に病態は改善した.脂質異常の病態はV型の表現型を呈する高カイロミクロン血症であると判断し,中鎖脂肪酸(medium chain triglyceride;以下,MCTと略)オイルを併用した脂肪制限食を提供した.インスリン治療と相俟ってカイロミクロンの代謝が進み,V→IIb→IV型の脂質パターンに変化したことがリポ蛋白分画精密測定により確認できた.退院後は糖尿病と高中性脂肪血症に対する包括的管理のために一般的な糖尿病食に切り替えた.本症例では急性膵炎の背景にある糖尿病脂血症の病態を詳細に調査することでさらに適切な治療を提供することが出来た.
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