高齢化社会が進行する日本において,介護状態の前段階ともいえるフレイルは社会的に注目を集めている概念である.フレイルは適切な介入により改善が得られることも知られており,予防医学の見地からも重要視され,社会的に大きな問題となっている.また,フレイルは心疾患・呼吸器疾患など様々な疾患に負の影響を与えることが知られているが,悪性腫瘍の予後および治療に対しても様々な影響を与えることがこれまでの研究で報告されている.消化器がんの中でも悪性度が高いとされている肝胆膵領域悪性腫瘍においても,フレイルが与える影響に関する研究が近年増えてきており,その影響が明らかになりつつある.本項ではフレイルが肝胆膵領域悪性腫瘍に与える影響について国内外の研究を総括し,肝胆膵領域悪性腫瘍患者のフレイルに対する適切な介入を含めた今後の展望について考察する.