学会誌JSPEN Vol.7 No.3
認知症により食事療法が順守できなくなったことで,低カリウム血症・低カルシウム血症・低マグネシウム血症を呈した短腸症候群の一例
著者
千葉恭司1),能田雅人2),押川 仁1),川口雅彦3),和氣優果4),山口睦美4),山田昌代2)
所属
1) 国家公務員共済組合連合会横浜栄共済病院 腎臓内科,2) 国家公務員共済組合連合会横浜栄共済病院 代謝内分泌内科,3) 国家公務員共済組合連合会横浜栄共済病院 消化器外科,4) 国家公務員共済組合連合会横浜栄共済病院 栄養科
キーワード
短腸症候群,低Ca血症,低Mg血症
DOI
10.11244/ejspen.7.3_145
詳細
短腸症候群は,小腸の大量切除や機能障害により栄養吸収が不十分になる疾患であり,特に高齢者や認知症患者では管理が難しい.症例は,認知症を持つ81歳女性.6年4カ月前に腹部大動脈瘤破裂後の小腸壊死にて手術を行い,残存小腸は約80 cmとなった.頻回少量食の食事療法を順守していたが,認知症の進行により過食して下痢を発症.これにより,低カリウム血症・低カルシウム血症・低マグネシウム血症をきたし入院となった.グルコン酸カリウムや活性型ビタミンD製剤の内服では改善せず,硫酸マグネシウムを静脈内投与したところ,電解質異常は改善した.外来で治療を継続するも再び電解質異常が悪化し,一度再入院となったが,ショートステイで食事摂取方法の管理と服薬の徹底をしたことで電解質異常を生じることなく経過した.認知症患者では,食事管理が困難であり,多職種による包括的なケアに加え,ショートステイなどの地域資源を活用した生活環境整備が短腸症候群の合併症予防に重要であると考えられた.
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