症例は80歳代女性.パーキンソン病による嚥下機能低下で経鼻胃管による栄養管理となった.仙骨部褥瘡のため,入時間短縮を期待して粘度可変型流動食に変更した.変更後1カ月で上部消化管内視鏡検査を行ったところ,胃内に8 cm大の白色の胃石を認めた.市販の強炭酸水での洗浄を行ったがわずかな縮小にとどまった.消化酵素剤の投与を行ったところ,1週間後のCTで胃石の消失を認めた.その後の経皮的内視鏡下胃瘻造設の際には,胃石を認めなかった.胃石は柿胃石の報告例が多く,コーラで溶解したとする報告が多い.粘度可変型流動食による胃石の報告例はPubMed上で1例報告があるのみでまれな病態である.粘度可変型流動食は注入時間の短縮,逆流の防止,下痢の防止などの利点があるが,胃の排出能力が低下した症例では胃石を形成する可能性がある.消化酵素剤は安価で容易な手段であり,粘度可変型流動食で胃石形成を認めた場合には,試みる価値がある.