要旨
要旨:何らかの疾患を持つ経口摂取不良の高齢者の栄養管理に対し,経皮内視鏡的胃瘻造設術(percutaneous endoscopic gastrostomy;以下,PEG と略)や皮下埋没型中心静脈ポート(totally implantable central venous access device;以下,CV ポートと略)などが選択されている.当院で2008 年度から2015 年度までに行われたCV ポート造設術は全818 例あり,そのうち栄養ルート目的が416 例であった.CV ポートは年々増加する一方,PEG は減少していた.栄養ルートのためのCV ポート造設416 例のうち,緩和ケア症例を除く74 例が栄養管理目的であり,年々増加傾向を示した.これを栄養ルートの適否について検討したところ,74 例のうち59 例(78%)はPEG 適応ありもしくは余地ありと判断された.PEG 適応であるにもかかわらずCVポートが選択された理由はPEG 拒否16 例(27%)が最も多かった.これらの背景には,PEG の診療報酬改定,転院先や在宅医療の事情,そして患者・家族の希望などが垣間見える.CV ポートの適切な医療提供のためには指針の整備や保険医療の見直し,さらにはアドバンスケアプランニング(ACP)などの社会的なコンセンサスが求められる.