9月を迎えました.暦の上では秋とはいえ,まだ夏の名残を感じる日々が続いています.一方,朝夕には少しずつ涼しさが感じられ,季節の移ろいに気づかされます.季節の変わり目は,私たち自身の体調や食生活を見直す機会でもあります.「食べること」は日々の営みの中であまりに身近ですが,生命を支え,病からの回復を支えるという意味で,栄養は医療の根幹をなすものだと改めて感じます.
さて,今回の学会誌JSPEN Vol. 8 No. 3 には,日々の栄養治療に多くの示唆を与えてくれる論文が掲載さ れています.私の一押し論文は,吉川千遥先生らによる「敗血症患者に対する栄養ケアプランの記録の質 評価と運用実態:NCP-QUEST を用いた単施設後方視的研究」です.本研究では,敗血症患者に対して管理栄養士が作成した栄養ケアプランを,Nutrition Care Process–Quality Evaluation and Standardization Tool (NCP-QUEST)を用いて客観的に評価しています.初回ケアプランはIntensive Care Unit/High Care Unit 入室後中央値19 時間と早期に作成され,その後も継続的に更新されていました.一方,記録の質には改善の 余地があることも示されています.興味深いのは, Sequential Organ Failure Assessment スコアが高い重症例ほど,栄養ケアプランの記録が充実していた可能性が示されたことです.栄養ケアでは,何をどれだけ投与したかだけでなく,患者の問題をどのように捉え,介入し,評価して次のケアにつなげたのか,その思考過程を記録し多職種で共有することも重要です.「記録の質」に光を当て,それを可視化した本研究は,日常診療を見直すうえでも大変意義深い報告だと思います.
また本号には,脊髄損傷急性期におけるNutrition Support Team 介入の実態と課題を検討した報告もあり,多職種による栄養管理の重要性を改めて考えさせられます.さらに,ICU 患者のrefeeding syndrome に関する報告や,食物アレルギーを背景とした長期間の食事内容の固定化により葉酸・ビタミンB12 複合欠乏性巨赤芽球性貧血を呈した症例など,「栄養を診る」ことの奥深さを感じさせる内容がそろっています.
日々の臨床にある疑問を拾い上げ,検証し,その知見を再び臨床へ還元することは,栄養治療の質を高める大切な一歩です.今後も学会誌JSPEN が,学会員の皆さまとともに栄養治療の課題とその解決策を共有し,明日からの診療につながる場であり続けることを願っています.
2026年9月吉日
e-journal「学会誌JSPEN」
編集委員会
名古屋市立大学医学部 総合診療医学・総合内科学講座
中山真美
編集委員会
委 員 長:石橋生哉
副委員長:千葉正博
編集委員:浅桐公男 小川恵子 川口 巧
立石 渉 谷口英喜 中山真美
宮田 剛 元井冬彦
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学会誌JSPEN Vol.8 No.3
令和8年9月30日発行
一般社団法人 日本栄養治療学会
〒103-0022 東京都中央区日本橋室町4丁目4-3
喜助日本橋室町ビル4階
MAIL:jimukyoku@jspen.or.jp
ジャーナル制作 中西印刷株式会社
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Ⓒ2026 by Japanese Society for Parenteral and Enteral Nutrition Therapy
学会誌JSPEN Vol.8 No.3
