要旨
【目的】膵臓がん周術期栄養不良の臨床的特徴を明らかにする.【対象および方法】当院において2007年~2014年の間に膵臓がん切除術(以下,膵がん切除と略)を行った症例255例で単施設後ろ向き観察研究を行った.CONUT法で術前・退院時の栄養状態を評価,栄養不良あり・なしで,臨床/治療因子および生存率を比較した.【結果】栄養不良は術前15%から退院時57%に増加していた.術前栄養不良は,やや高齢で男性に多かったが,進行度・入院期間・補助療法に差がなく,生存率においても差を認めなかった.退院時栄養不良は,長時間手術・出血量過多・膵頭切除・血管合併切除・長期在院が有意に多く,生存率が低かった.多変量解析において,コレステロール低値・切除可能境界・長時間手術・出血量過多・長期在院が退院時栄養不良に関与した.【結論】膵がん切除の予後は術前より退院時の栄養状態に強い影響を受ける.低コレステロール・進行がん・長時間手術・出血量過多・長期在院がリスク因子であり,退院後も栄養評価・介入が必要である.
学会誌JSPEN Vol.1 No.4
膵臓がん周術期の栄養不良例の臨床的特徴
著者
元井冬彦,畠 達夫,有明恭平,川口 桂,石田晶玄,水間正道,中川 圭,亀井 尚,内藤 剛,海野倫明
所属
東北大学大学院 医学系研究科外科病態学講座消化器外科学分野
キーワード
膵臓がん,周術期,栄養不良