要旨
【目的】血清プレアルブミン(Prealbumin;以下,PreAlbと略)値は胃切除後の合併症発生を予測する有用な指標であると報告がある.しかし,肺切除術との関連は明らかでない.そのため,本研究では肺がん手術患者の術後呼吸器合併症の発症と術前PreAlb値の関連を検討した.【対象および方法】2014年1月から2016年12月に,当院において胸腔鏡下肺葉切除を施行した原発性肺がん患者を診療録より後方視的に調査し,術後呼吸器合併症を認めた患者と認めなかった患者の臨床病理学的背景を比較検討した.さらに,ロジスティック回帰分析を用いて術後呼吸器合併症のリスク因子を抽出した.【結果】449名中,術後呼吸器合併症を29例(6.5%)に認めた.合併症あり群ではPreAlb,body mass index(以下,BMIと略)が有意に低く,男性,糖尿病,重度喫煙者の割合が有意に高かった.多変量解析ではPreAlb,BMI,喫煙指数が術後呼吸器合併症と有意に関連していた.【結語】術前PreAlb低値は,低BMI,喫煙と並び,術後呼吸器合併症予測の簡便かつ有用な予測因子となる可能 性が示唆された.