要旨
症例は66歳の女性で,難治性潰瘍性大腸炎に対して腹腔鏡下大腸全摘術,回腸嚢肛門管吻合,予防的回腸双孔式人工肛門造設を施行した.縫合不全のために人工肛門が閉鎖できず,high output stomaの状態が持続していた.術後11カ月目に脱水症で入院し,入院2日目に一過性の意識障害,痙攣発作を認めた.脳疾患や心疾患は否定的で,血液生化学検査で低Mg,低Ca血症を認めた.Mg補充療法を行ったところ,これらの改善を認めた.しかし,Mg補充療法を中止した20日後に再び同様の電解質異常を伴う意識障害,痙攣発作を認め,再度Mg補充療法を行った.低Mg血症は腸管からの吸収障害によるもの,低Caは低Mg血症による二次性のものと考えた.吸収障害の病態は持続しており,一時的なMgの補充療法では再燃の可能性があるため,Mgの経静脈投与を継続する方針とした.退院後から現在まで週1回の外来でのMgの経静脈投与を継続中である.
学会誌JSPEN Vol.1 No.4
大腸全摘術,回腸人工肛門造設術後に低Mg血症および低Ca血症による意識障害を繰り返した1例
著者
高田暢夫1),尾崎和秀1),十萬敬子2),佐賀啓子2),小谷小枝2),楠瀬和佳奈2),安田春奈2),坂本一美2),吉松香絵2),福井康雄2)
所属
高知医療センター 消化器外科・一般外科1),同 栄養科2)
キーワード
低Mg血症,意識障害,high output stoma