要旨
【症例1】71歳男性.肝肺症候群で他院入院加療中,週1回程度の腹水ドレナージと酸素投与で経過観察されるも,転院希望があり当院へ紹介入院となった.転院後,同様に加療するも腹水減少は認めなかった.カルニチン投与開始後8日間で5.6kg の体重減少を認め,1カ月後のCT検査で腹水消退が確認された.【症例2】76歳男性.嘔吐,食欲不振がありCT検査で大量の腹水を認め入院.上部消化管内視鏡検査を施行し進行胃がんおよびがん性腹膜炎と診断した.腹水ドレナージを週1回行い第18病日に化学療法目的で転院,転院先でも同様にドレナージ施行されるも全身状態不良で化学療法中止,41日後に再入院となった.第1病日に腹水ドレナージを1回施行,カルニチン投与を開始.第5病日には体重が9.8kg 減少し,1カ月後のCT検査で腹水減少が確認された.ATP消費増大が疑われる病態での難治性腹水に対して,カルニチン投与の有効性が示唆された.