現在世界を震撼させている新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックは,いまだ衰えることなく多くの人々を不安の渦に巻き込んでいる.画期的な治療薬やワクチンをはじめとする予防的な治療法の開発に至っておらず,手をこまねいて観ているうちに多くの患者が罹患し,苦しい症状に耐え,そして尊い命が失われていく.COVID-19 は,急激に重篤な呼吸器障害を併発し,長期の集中治療室(ICU)での治療が必要となり,そして高齢者や複数の疾病を発症している方々では死亡率が高いことが指摘されている1)~5).このようなハイリスクな症例では多くの場合,背景として低栄養ならびに骨格筋の減少や機能低下(サルコペニア)の存在があり6)~8),それがICU での治療を長引かせ,時には残念な結果を招くことにつながることが指摘されている7).一方,生体の免疫力は栄養状態によって支えられており,低栄養で特に筋肉量が減少した人あるいは動物では,明らかに細菌やウイルスなどの感染症に対する免疫能が低下していることが知られている6)9).すなわち, 栄養状態を良好に保つことはCOVID-19 ウイルスから身を守る大きな一助となるものと考えられる.そこで,一般社団法人日本臨床栄養代謝学会(JSPEN)では,急遽“COVID-19対策プロジェクト チーム(P 009)”を立ち上げ,世界中から発信されている最新の情報とこれまでに集積してきた代謝栄養学的知見からCOVID-19に対する治療と予防に関する栄養学的アプローチについて提言したい.