栄養の力で治療を支える

澤田 実佳 さん
東京大学医学部附属病院 病態栄養治療センター
(東京都文京区)

「病院管理栄養士」を目指したきっかけを教えてください  

 進路を考える時期に、漠然と「医療に関わる仕事がしたい」という思いがありました。母が病院の管理栄養士として働いていたため、私にとって管理栄養士は医療の一端を担う職種として身近な存在でした。その姿に影響を受け、私も病院の管理栄養士を目指しました。

主な業務、一日の流れなどをお聞かせください

 その日の業務内容にもよりますが、入院患者さんと外来患者さんの業務に分けてお伝えします。

病院管理栄養士」として現場で直面する課題にはどのようなことがありますか。またそれに対してどのような工夫をされていますか

 病院管理栄養士として感じる課題は、多様な病態や治療に対する知識が求められ、日々最新の情報にアップデートし続ける必要がある点です。慢性疾患や急性期疾患、合併症/併存症の有無、治療法、さらには急性期か慢性期といったさまざまな病態の違いによって栄養管理の方針は大きく変わります。また、患者さんの年齢や生活背景や社会的な状況を考慮する必要があり、患者さんにとって適切な栄養管理を導き出すのは容易ではありません。この課題に対しては、“幅広い分野への学びの姿勢”、“専門職への積極的な関わり”、“臨床経験の蓄積と共有” が克服の一助となると考えています。具体的には、専門とする栄養関連学会だけでなく、治療法や病態の理解を深めるために他分野の学会や勉強会にも参加し知識の幅を広げること、業務中に気づいた小さな疑問を放置せず、医師に「なぜこの治療を選択したのか」、薬剤師に「なぜこの薬が処方されているのか」を思い切って質問するようにすることで、治療の栄養管理の理解が深まり、より的確な対応が可能になります。また、自分の臨床経験は非常に価値があると考えています。過去の症例や経験から得た知識を活かしつつ、他の管理栄養士との情報交換や連携(横のつながり)も課題解決の重要な糸口になると感じています。

医師とのベッドサイド訪問
病棟NSTカンファレンス

「病院管理栄養士」としてやりがいを感じるのはどのようなときでしょうか

 私にとって、「病院管理栄養士」の業務はどれもやりがいのある仕事ですが、やはり治療を終えて退院される姿を見ることは、とても嬉しく大きな励みです。
 患者さんから少し離れた場面ですが、臨地実習生や医学生への実習を通して、「『病院管理栄養士』の仕事に興味を持った」、「栄養管理の重要性を理解した」といった言葉を学生さん方からいただいた際にも、やりがいに近い気持ちを抱きます。「病院管理栄養士」の仕事が未来の医療人に伝わり、栄養管理の大切さを理解してもらえることは、専門職としての誇りや責任を改めて実感する瞬間です。

「病院管理栄養士」を目指す方へメッセージをお願いします。

 管理栄養士が活躍できる職場は多岐にわたりますが、「病院管理栄養士」の特徴は「誰のために仕事をしているのか」が分かりやすいという点が挙げられます。また病院の業務は、管理栄養士同士はもちろん、多職種のスタッフと連携しながら行っていきますので、“最適な医療の提供“という共通の目標に向かっている連帯感があります。「病院管理栄養士」として働く中で困難や課題に直面することもありますが、それを乗り越える努力や経験は、自分自身の成長につながるだけでなく、患者さん一人ひとりへの栄養治療に還元できるという点においても、課題克服への大きな原動力になります。ぜひ皆さんと一緒に、「病院管理栄養士」として学びを深めながら、患者さん一人ひとりに寄り添い、栄養の力で治療や回復を支えていけたら嬉しく思います。