要旨
当院の肝疾患症例は肝臓専門医により管理治療されるが,重症および進行例が多く,しばしば低栄養状態を伴うため管理栄養士は積極的に栄養介入を行っている.今回,管理栄養士が非代償性肝硬変を背景とする進行肝がんに介入し,栄養療法が有効であった1 例を経験したので報告する.症例は60 歳台男性.肝不全徴候増悪による緊急入院後,緩和医療の方針となった.管理栄養士はサルコペニア判定を含む栄養評価を行い,腹部膨満と嘔気による食欲不振に対し内科的治療と並行して食事個別対応,肝不全用経腸栄養剤を導入し,栄養教育を行った.その結果エネルギー充足率は65~70%,血清アルブミン値を維持,薬剤は内服薬のみとなり,本人が希望していた在宅緩和医療を導入することができた.管理栄養士による入院早期からの継続した栄養管理は,肝不全状態の肝がん患者においても経口摂取と栄養状態を維持し,終末期緩和医療に貢献しうることが示唆された.
学会誌JSPEN Vol.2 No.5
非代償性肝硬変を背景とした進行肝がん症例への終末期緩和医療における管理栄養士による栄養介入効果
著者
佐々木麻友1),長崎 太2)
所属
仙台市立病院 栄養管理科1),同 消化器内科2)
キーワード
進行肝がん,管理栄養士,終末期緩和医療