学会誌JSPEN Vol.7 No.2
血清脂肪酸分画と便脂肪染色から静注用脂肪乳剤の投与量を検討した超短腸症児の1例
著者
久松千恵子1,2)
所属
1) 現 兵庫県立こども病院 小児外科,2) 社会医療法人愛仁会高槻病院 小児外科
キーワード
脂肪乳剤,脂肪酸分画,便脂肪染色
DOI
10.11244/ejspen.7.2_69
詳細
症例は1歳2カ月男児.日齢33に腸回転異常症・中腸軸捻転を発症し,残存小腸5 cm・回盲弁無しの超短腸症となった.発症時腸瘻を造設し,4カ月時に腸瘻閉鎖を行った.栄養は経口摂取と静脈栄養を併用.腸瘻閉鎖前の20%イントラリポス®の平均投与量は0.8 g/kg/dayで,脂肪酸分画にて必須脂肪酸欠乏の指標であるTriene/Tetraene比(以下,T/T比と略.基準値0.02以下)は0.02だった.腸瘻閉鎖後に脂肪乳剤を0.3 g/kg/dayまで漸減すると,T/T比は0.19と増加し必須脂肪酸欠乏と診断した.腸瘻閉鎖後の便脂肪染色は陽性が続き,経口脂肪摂取量の増量は出来なかった.その後T/T比を元に脂肪乳剤を1 g/kg/dayまで増やすと,T/T比は0.02まで低下したことから,患児の場合,必須脂肪酸欠乏予防に20%イントラリポス® 1 g/kg/dayの投与が必要と考えられた.
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