患者は80歳女性.介護施設入所中,半年の間に食欲不振,抑うつ,activities of daily living低下,肺炎の症状が出現し,当院精神科病棟に入院となった.入院時,姿勢反射障害,口唇のジスキネジアを認めた.薬剤性パーキンソニズムを疑い,薬剤の整理をしたが症状は改善しなかった.入院3日目に嚥下内視鏡検査を実施し中等度の嚥下障害と診断された.入院23日目に診断的治療としてレボドパを開始し,嚥下内視鏡検査の再評価にて嚥下障害の改善を認めた.以上の経過より薬剤性パーキンソニズムにパーキンソン病が合併していたと診断した.症状が改善し85日目に退院となった.本症例ではドパミン補充療法により,定型抗精神病薬およびパーキンソン病によるサブスタンスP低下に起因する嚥下障害が改善したと考えられる.精神科病棟における長期療養患者の嚥下障害は原因が多岐に渡ることもあり,その診断と治療には主治医との慎重な連携が重要となる.