要旨
患者は48歳,女性.顎下腺癌ステージⅣc(T3N0M1)に対し,局所コントロール目的に左顎下腺全摘術 を施行した.術後1年9ヶ月,肺転移巣の増大を認めたためカルボプラチンによる化学療法を3ヶ月間施行したが, 無効であったため臨床試験でペンブロリズマブを開始した.腫瘍の増大を認めなかったが,導入3ヶ月後に1型糖 尿病を急性発症した.強化インスリン療法によりHbA1cは低下したが,体重減少を認めたため,外来にて管理栄 養士が介入し,食事量に合わせてインスリン量を調整するカーボカウント法を導入した.導入後は食後高血糖の頻 度が減少し,体重の増加を認めた.がん治療に伴う1型糖尿病患者では,病状の進行や治療に伴って食事摂取量が 不安定になりやすいため,カーボカウント法が有用である.がん専門病院においても標準的な血糖管理方法の1つ として,カーボカウント法を導入する意義が示唆された.
学会誌JSPEN Vol.1 No.1
免疫チェックポイント阻害薬によって生じた1型糖尿病にカーボカウント法が有効であった顎下腺癌の1例
著者
榎田滋穂1),熊谷厚志2),望月宏美1),中濵孝志1),井田 智2),峯 真司1)2),比企直樹1)2)
所属
公益財団法人がん研究会有明病院 栄養管理部1),同 消化器外科2)
キーワード
カーボカウント法,免疫チェックポイント阻害薬,栄養指導