要旨
短腸症候群患者では吸収・合成不良による潜在的なビタミンK 欠乏が報告されている. 一方N-methylthiotetrazole 基(以下,NMTT 基と略)を持つ抗菌薬投与はビタミンK 代謝を阻害する.今回これら2 つの機序により血液凝固異常が出現した症例を経験した.72 歳の短腸症候群患者が原因不明の腸腰筋血腫で入院し,後ほど発症した菌血症に対してNMTT 基を持つセフメタゾールが投与され血液凝固異常が確認された.この血液凝固異常を契機に両者の原因がビタミンK の欠乏と判明し,ビタミンK の静脈投与と抗菌薬をNMTT 基を持たないセファゾリンに変更することで改善した.短腸症候群患者では吸収・合成不良によりビタミンK 欠乏を起こしやすいが,NMTT 基を持つ抗菌薬の投与を契機に血液凝固異常の増悪を起こす可能性があるため,プロトロンビン時間の評価が必要である.
学会誌JSPEN Vol.2 No.3
N-methylthiotetrazole基を持つセフメタゾールの投与を契機に判明した短腸症候群患者のビタミンK欠乏
著者
山本耕治郎1),細川真弥2),内村恭子2),小野 勝2),長谷川優子3),樋口由美4),望月貴子4),植木 明4)
所属
京都市立病院 腎臓内科1),同 薬剤科2),同 看護科3),同 栄養科4)
キーワード
ビタミンK欠乏,短腸症候群,NMTT基