JSPEN GLIMワーキンググループ

令和6年度診療報酬改定で低栄養診断にGLIM基準を用いることが厚生労働省より通達されました。それを受けて、JSPENではGLIM基準を使用するにあたって以下の説明を追記します。

SGA(Subjective Global Assessment、主観的包括的評価)は日本では最も使用されてきた栄養評価ツールの一つです。JSPENガイドラインでも記載しているようにSGAは本来アセスメントツールですが、本邦では栄養スクリーニングツールという位置付けでも使用されてきました。栄養スクリーニングとは、栄養リスクのある者をふるい分けること、栄養アセスメントはさらに詳しく栄養状態を評価すること(例えば患者を栄養不良なし、中等度の栄養不良あり、高度の栄養不良ありなどと診断すること)ですが、本邦ではこれまで栄養評価の際にスクリーニングとアセスメントが明確には区別されず、入院時などにSGAを用いて2つのステップが同時に行われてきました。JSPENのガイドラインやテキストブックの図でも栄養管理プロセスの最初のステップが、“栄養スクリーニング(栄養アセスメント)”と表記されているのも、このような日本の実情を反映しています。JSPENのテキストブックやポケットブックにおいてSGAはスクリーニングツールと記載されておりますが、SGAはアセスメントまで行っていますので、手間がかかり習熟も必要で、簡便なスクリーニングツールとしては不向きです。

今回厚生労働省から推奨されましたGLIM基準を用いる際には、スクリーニングとアセスメントを明確に分けて行う必要があります。スクリーニングツールはどのような施設でも誰もが簡単にでき、かつ栄養リスク症例を見出せる検証済みのツール、例えばMUST, NRS-2002, MNA-SF®などが適しています。これらを用いて栄養リスクありと判定された者に、GLIM基準を用いて低栄養を診断します。SGAをスクリーニングツールとして用いることは、結果的にアセスメント(低栄養の診断)を二重に行うことになり推奨出来ません。

今後GLIM基準は様々な医療の現場で普及していくと思われます。これを機会に会員の皆様には、栄養スクリーニングとアセスメントを明確に分けたプロセスを理解して頂くようお願い致します。

JSPENはGLIM基準の普及に向け発信を続けてまいります。

<参考文献>
日本静脈経腸栄養学会(編):静脈経腸栄養ガイドライン 第3版 p8, p43 2013
日本臨床栄養代謝学会(編):JSPENテキストブック p127-129 2021
日本臨床栄養代謝学会(編):栄養療法ポケットブック p2 2023